当時、多くのクライマーが使ってたであろうアメリカンチョークの質が変化し、いつからかフリクションが劇的に悪化したことがありました。チョークの性能によってクライミングのパフォーマンスが大きく左右されることを知った弊社ファウンダーの山本は、当時経営していた東京郊外の小さなクライミングジムの壁裏スペースを使ってチョークの研究を始めました。
研究は炭酸マグネシウムの比較実験をするところからはじまり、当時市販されていたいくつかのチョークと混ぜ合わせてどのように変化するのかを試していました。現在でも製造しているPUREの原型となる、炭酸マグネシウム自体のミックスによる変化のアイデアになり、これらの試作品はジムに出入りするクライマー達に販売していました。
日本を代表する有名クライマーのツアーに参加した友人から、アロマの効果の大きさについて聞き、アロマの研究を始めました。ひょんなことから、チョーク自体に狙った香りを付けられる方法を発見し、EFFECTの原型となるチョークが生まれました。この頃にはブロックチョークの試作や、色付きチョークなどについても作っていましたが、それぞれ製品化するためには多くの壁があったため頓挫しています。
香り付きチョークに対する評判がよく、いくつかのショップから販売要望があったため「東京粉末」の名前を着せ、チョークブランドとしてスタートすることになりました。
当時はチョークの性能に対する感度も今とは比べ物にならないほどで、クライマーのほとんどが「チョークは安ければそれでいい」という認識でした。「東京粉末?なにそれ,,,え、チョークのブランド?(笑)」
今ではチョークブランドというのは当たり前になりましたが、当時は登山メーカー、クライミングブランドのアクセサリ的な商品がチョークで、チョークの良し悪しについての基準は、「安さ」だけだったのです。
EFFECTと対照的な香りであるSPEEDを発売し、壁の裏で作ることにも限界が訪れていました。時を同じくして山本が経営していたジムが大きな敷地へと移転。チョーク開発・製造用の部屋をつくって、生産量は日に日に増えていきました。ちょうどこの頃から工場長がチームメイトに。まだ商品はPURE, EFFECT, SPEEDの3種類でした。
チョークの可能性を感じていながらも炭酸マグネシウムだけの加工ではフリクション向上に限界があるとわかった私たちは、もっともっとフリクションを上げる方法を手探りで模索していきました。
チョークでグレードが変わる
2014年、紆余曲折しながらも当時は制汗剤に含まれている原料に着目していて、さまざまな実験と試行錯誤の末に、今までのチョークとはまったく次元のことなる性能のチョークを生み出すことに成功しました。東京粉末の代名詞ともいえるチョーク、BLACKの完成です。
「チョークによって登れるグレードが変わる。」紛れもなくBLACKはクライミングチョークの転換点になりました。
BLACKを発売してから2年が経ち、アイデアがうまく具現化できない日々が続いていました。「歯磨き粉のアクアフレッシュように2色の溶剤が一緒に出てくるのはどうでしょう」という工場長のひらめきから、机上の論理では混ぜることのできない2種類の原料を混在させることに成功し、まさにチート級フリクションを手に入れることができました。BOOSTと名づけたこの商品は、価格の高さと内容量の少なさから、「課金アイテム」と呼ばれるようになり、多くのリッチクライマーに親しまれました。今でこそ当たり前になった「下地」チョークのはじまりです。ワールドカップのアイソレーションにちぎれたBOOSTの袋の破片が散乱していたり、IFSCから原材料リストの提出を求められたりしたこともありました。
BOOST発売後も、フリクションを上げるチョークボール 'ASTRO' であったり、手を洗ってチョークの性能を最大化させる 'REACT' 、塩基性炭酸マグネシウムには難しいと言われていたチャンキーチョークの実現と 'RX'、'V3'の完成など、常に挑戦をして新しい商品を世に出して参りました。
海外輸出も積極的に行っておりまして、現在ではアメリカ・カナダ、ヨーロッパにオセアニア、そしてアジア、25カ国以上で販売されています。そしてそれらの国々では、我々が2015年に味わった、「チョークでグレードが変わる」という認識が広まってきています。日本人選手の飛び抜けたパフォーマンスの高さと同時にその知識と経験の豊富さによって、日本のチョークを取り巻く環境は世界最先端です。たくさんの選手、偉大なクライマー達に感謝しながら、そのパフォーマンスを少しでも前身させられるような製品づくりをして参ります。
COMPANY
COMPANY NAME | 合同会社東京粉末 / TOKYO POWDER, LLC |
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ADDRESS | 1-9-4 Nangai Higashiyamato Tokyo, 2070014 JAPAN |
代表者 / C.E.O. | 代表社員 山本 充男 / Mitsuo Yamamoto |
事業内容 BUSINESS |
クライミング用品の製造・加工・販売 Production and wholesale of climbing equipment. |
事業者登録番号 | T2012803001485 |