チョークは乾燥していればいいってものじゃない。それでも、なんとかして乾燥させたい男がいた。
ハカセです。
ご存じの方も多いかもしれませんが、東京粉末の製品には、水分量が比較的高めのモデルが多くあります。
チョークは乾燥していればいるほどよい、というわけではありません。乾燥しすぎたコンディションは、逆にスリップを誘発することもあります。効率よくフリクションを生み出すためには、適度な水分が欠かせないのです。
そこに着目し、単純に乾燥させるのではなく、水分量を適切に調整することでフリクションを生み出しているのが、RX、V3、Super.B、ZERO.TTといったハイエンドモデルになります。
しかし、ここには弱点もあります。
それが、指皮の消耗です。
指皮が消耗すると、どうしても指先から汗がにじみ出てきます。すると水分過多の状態になり、せっかくのフリクションが低下してしまう。
そんなときは...?
東京粉末の被験者筆頭、若宮くんは、自他ともに認める手汗クライマー。手汗への敵対心と乾燥への執着心は、それはもう天下一品です。
そんな彼が、かれこれ3年ほど前でしょうか、ヌメり手クライマーのためのチョークモディファイ術を編み出しました。
最初は半信半疑だった私(たぶん本人も)。
しかし、チョークの調合イベントを各所で開催し、さまざまなクライマーの手や登り方、フィールドなどで検証を重ねるうちに、これが結構な効果を発揮することがわかってきたらしく...
今回は、そんなチョークモディファイ術について、若宮くん本人が記事を書いてくれました。
チョークマニアなヌメり手クライマーの裏技、まさにワザップ。
ご一読あれ!
SPECIAL REPORT
チョークとレンチンと私
TEXT BY 若宮京介 : 東京粉末 被験者筆頭/自他ともに認める手汗クライマー
今はなきジムでのイベントの出来事でした。
「チョーク調合」
あなたの手に合ったチョークを調合します、というような一風変わったイベントです。
手汗が多い私にとっては、チョークは必須。
既に完成されたものに、更に手を加え別のものを作るというような、背徳感増し増しのイベントでした。

記念すべき最初のチョーク調合イベント。ビンティにて。
原材料の石から作るチョークは、美味しく無い…あ、違う、手に合わない。
原因は、指紋にありました。
指紋の隙間に入るか入らないかで、チョークの乗りが変わります、海水が原材料のチョークは、粒子が細かいので指紋の隙間に入るのです。
まぁ、それだけではないのですが…
手汗の多い私は、なんとかして後半までチョークが続くようなものが欲しいと思い、混ぜ始めたのです。
感覚的な話ですが、手の表面に二層のチョークがあれば良いのではないか…?と。
正確には、二層というより取れにくいチョークと取れやすいチョークを混ぜる事で後半まで残るのではないかと。
チョークとは、
「それが無くなった時に効果を発揮する物」
指には皮脂腺がありません。
しかしエクリン汗腺があります、という事は滑りとは他からの油分と、多方面からの水分の付着や汗腺から出て滑るのです。
その滑りを抑えたい…抑えたい…抑えたい…水分?!
という事で、水分量を減らすには…と考えました。
始めは、劣化チョークでも水分量は減るが使っている以上は油分やホコリなどの細かいゴミが混ざる。
それにより、指に付く時にちゃんと付かない。
まさに、指がチ○○みたいに敏感になる訳ですね。
どうすれば……と、朝ごはんにレンジを使った時にひらめいたのは、レンチンしたらどうか?と。
熱を加えれば、水分が減る!と。
ちょうど、ZERO.TTが発売された時期ですね。
更に水分を減らしたら、もっとすり込みやすくなるというのはわかっていたので、試験的にレンチンしてみたら、焦げました。
まぁそうですよね、同じ場所にずっと熱を加える訳ですから……危うく大火事です。
レンジの扉を開けた時に、粉が舞いました。
水分が抜けたのです。
それから、秒数を変え、途中で混ぜてもう一度…というように繰り返しレンチンしました。
500Wにして、最大で50秒が個人的には一番好みの乾燥具合です。
30秒くらいで一度混ぜます。なるべく均一に乾燥させたいので平たいお皿がおすすめ。
「それが無くなった時に効果を発揮する物」
まさに、指紋と指紋の隙間に入り込み、指紋にはチョークの積層が出来て、もし取れたとしてもZERO.TTの成分の効果か手汗が出にくくなる。というような、なんとも手間のかかるチョークの完成です。
味も悪くない。
水分チェッカーで油分と水分を測り、データをとり、どれとどれを混ぜて、レンチン何秒みたいな…。
そのおかげか、富士川での開拓エリアの高グレードや、小川山の冬の日のような数手だがヌメると駄目みたいな課題は、思っていたより早く登れました。
それからというもの、高グレードや湿度がかなり高い場合にはレンチンしたZERO.TTを持ちだします。
手間はかかりますが、滑り落ちするよりかはずっとマシです。
近所のエリア、富士川ボルダーにて。
いかがでしょうか。レンチンモディファイ術。
やってみたくなりましたか!奥さんに怒られますよ!
若宮くんの実験条件をまとめると、こんな感じです。
- チョーク約80gを平たいお皿に広げる
- 電子レンジ500Wで最大50秒
- 30秒くらいで一度取り出して混ぜる
実験に関する注意事項
これはあくまで若宮くん個人の実験記録です。安全性を確認した加工方法ではありません。
電子レンジで粉末を加熱すると、局所的な過熱や容器の破損、粉末の飛散などが起こる可能性があります。実際、若宮くんも最初の実験ではチョークを焦がしてしまったそうです。
飛散した粉末が電子レンジ内部に入り込むと、故障の原因になる可能性もあります。
ご家庭での再現を推奨するものではありませんので、その点はご注意ください。

若宮家の電子レンジ。実験の痕跡が残る、歴戦の一台。
実は、電子レンジって、少量のチョークを加工するにはとても手軽な道具なんですよね。
以前、RXやV3などの試薬を大量に使ったブロックチョークを試作していたとき、電子レンジでしか作れない、幻の超ハイスペックチョークがあったのを思い出しました。
「これはすごいものができた!」
と思ってスケールアップしようとしたものの、当時の工場では電子レンジで少量ずつ作ることしかできず、ほかに適切な製造方法も見つからなかったため、泣く泣く断念しました。
でも、今なら……。
そんなことを思い出させてくれた、若宮くんのレンチンモディファイ術でした。
手汗が多くて、なかなか自分に合うチョークが見つからない方。
チョークの水分量や、自分の手との相性について、改めて考えてみるのも面白いかもしれませんね。
ハカセ
